自分事に置き換えられる医師~地域包括ケアとは、「10年後の(地域の)アウトカムを考えて、目の前の患者に対して治療を選択すること」~

 昨年(2017年)まで年間15回程度だった医師向けの講演回数が、2018年は50回以上に増え、全国各地を巡らせていただきました。

 人口が増え続け、当面は医療需要が伸び続ける大都市型の先生方の多くが楽観的な一方、前々回の「魅力ある街づくりには、質の高い医療サービスが不可欠」で紹介した“消滅可能性都市”に該当するような地域では、暗い雰囲気が漂っているように感じました。

 ただし、これは全体的にみた印象で、どの地域でも一人ひとりの医師からは前向きな反応がありました。例えば、各専門医は▽院内の他の医療チームのアウトカム(例えば平均在院日数を短縮させること)に貢献できることを見つけること▽再入院率を改善させるために地域包括ケア病棟などを用いて教育入院(などの患者教育)に力を入れること▽今後増加する認知症に伴う入院上位疾患(認知症を有する患者の多くが、脳梗塞、肺炎、骨折・外傷、心不全、尿路感染症、片麻痺などの疾患で一般病棟に入院しています)の再入院率を減らすために、かかりつけ医との連携を密にする--の3つが地域包括ケアの中で重要になるというお話をしています。このうち、真ん中の「教育入院」についてはやはり糖尿病が中心になるとの認識から「私には関係ない」と受け取る医師がいる一方、「心不全の教育入院をはじめてみようか」と前向きに考えていただく医師もいます。

 また、地域包括ケア=在宅医療の推進とだけ捉えて「在宅医療はやりたくない」と、地域包括ケアという言葉自体にアレルギー反応を示す医師がいる一方、「年齢・体力的に在宅医療は無理だけど、それ以外の1~3次予防に力を入れたい」と、自院のポジショニングを“再定義”する医師もいます。

 私の講演内容をポジティブに捉えてくれる医師に共通するのは、地域の(なかで課題のある)アウトカムを良くしたいと気持ちが強いということです。講演の中では、地域包括ケアとは、「10年後の(地域の)アウトカムを考えて、目の前の患者に対して治療を選択すること」であると地域包括ケアを定義しています。講演後に「目の前のことしか考えられなくなっていました」と話しかけてくれる医師もいます。

 患者さんが10年後に希望を持つためには、医療提供者側が目の前の「緊急でかつ重要なこと」だけにフォーカスしていてはいけません。「緊急ではないけれど重要なこと」に毎月数%でも時間をかけてみてはいかがでしょうか。

この記事の著者

川越満

川越満

1970年、神奈川県横浜市生まれ。

1994年米国大学日本校を卒業後、製薬企業向けのコンサルティングを主業務とするユート・ブレーンに所属。

コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備える「コンサナリスト」(商標登録済)として、講演活動、書籍の出版プロデュースなどで活躍中。

医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。

現在は「業界入門書の制作」と「医師とMRの相互理解促進」を使命として、役立つコンテンツを生み出しつづけている。著作は30冊以上。肩書の「コンサナリスト」とライフワークの「セルフ・ブランディング」を10年前の2004年に商標登録している。

URL:https://consunalist.jp/

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