ナースがすぐ辞めるクリニックが2025年に迎える人材不足の末路

日本看護協会が看護師の離職率について、2016年の病院看護実態調査をもとにデータを発表したのは記憶に新しいところです。

「常勤看護職員離職率10.9%、新卒看護職員離職率7.8%」

ここ数年、離職率はほぼ横ばい状態となっており、それほど目立った動きは見られませんでした。しかし、その一方で、規模があまり大きくない医療施設ほど離職率が高い傾向があるという事実は、重く受け止めなくてはなりません。

なぜなら、2014年時点で看護職員は全国で約160万人いますが、少子高齢化などの影響により、その10年後の2025年には200万人が必要だと言われているにも関わらず、新たな資格取得者5万人を加味したとしても不足することが予想されているからです。

さらに、看護師免許を取得しながらも何らかの理由で離職している人は16万人、再就業者については14万人と見積もっており、この部分をどう取り込むかも大きな課題となっています。

これにより、大病院と比較して採用力に乏しい医療機関は、働く側にとってより魅力的な側面を打ち出さなければ将来的に、マンパワーが不足することでしょう。

●看護師はなぜ離職するのか?

では、なぜ看護師の離職がこれほど、取り沙汰されるのでしょうか。
それには、いくつかの理由があります。

まず、看護師は資格職であり、需要が多いため再就職しやすいという面があります。これにより、結婚妊娠に差し掛かった世代は、 離職を考えたり、育児環境を確保しやすい職場へと転職していくのです。

実際に、厚生労働省が調査した看護職員就業状況等実態調査によると、看護師の退職理由トップは出産・育児で22.1%となっており、その他の理由として、結婚や他施設への興味、人間関係の悪さなどが列挙されています。
反対に、給与やキャリアアップの機会が少ないことを理由に離職する割合は10%以下と、給与の少なさが必ずしも離職理由の大きな要因を占めているわけではないことがわかります。

実際に、500床以上を有するある病院で師長として活躍している方にお話を伺うと、看護師の離職に関して次のような事例を体験したそうです。

 ・出産を機に勤務を調整してもらったが、肩身の狭い思いをした
 ・会社員の彼氏ができたときに、時間がなかなか合わない
 ・病院についていけなかったとき、条件の良いクリニックや美容整形外科への転職を考えた
 ・夜勤が多く、せっかく妊娠したけれど流産してしまった

●看護師の採用コストはどのくらい?

様々な理由で看護師が辞めた場合には、新たに人を雇用しなくてはなりません。
仮に1人の看護師を雇おうとすると、どのくらい採用コストがかかるものなのでしょうか。

厚生労働省が行なった職業紹介事業に関するアンケート調査によると、医師、看護師ともに民間職業紹介事業者を利用した採用1件あたりのコストはおよそ年収の20%ほど。50〜100万円未満がボリュームゾーンです。
一方で、このシステムを利用しながらも、すぐ辞めてしまうという割合も30%を占めるという結果が出ています。

民間職業紹介事業者を介した採用方法のほか、採用ホームページを独自に開設する、ハローワークを利用する、定期的に広告を掲載するなどの方法もありますが、やはり迅速で確実性が高く、ミスマッチの少なさを理由に、民間職業紹介事業者を利用するケースは多いようです。

チーム医療

●離職防止のためにできること

採用した看護師に長く働いてもらうためには、どのような策を講じたらよいのでしょうか。

給与を高くすればもちろん、最初は注目が集まりますが、これでは後々の経営も逼迫してしまいます。また、決してそれだけで良い人材が集まってくるとは言えないのが、様々なデータによって裏打ちされています。

実は、昨今の働き方改革実行計画を受け、医療機関における医師の過重労働に大きな視線が向けられています。これまで、なんとなくやり過ごしていた医療機関に労働基準監督署の立ち入り調査が入る機会が増えたのです。
医師の働き方に主眼を置いた調査が多いのですが、それを切り口に看護師をはじめとした医療従事者の働き方にも目が向けられていることは否めません。

病院やクリニック側にとっては、なかなか耳の痛い状況になってきたかもしれません。しかし、名医は適切な労働環境なくして成り立たないもの。看護師がどんどん辞めてしまっては、医師の負担は増えるばかりです。
これを機に、就業規則や人事制度の見直しや、よりシンプルで納得性の高い給与体系、個々人に対する労働比重などを解消していくことが、ゆくゆくはクリニックの運営によい影響をもたらすと考えられます。

スタッフがコロコロと変わるクリニックは、非常に目立ちます。また、患者さんは働いている人たちが疲れている空気を敏感に感じ取るものです。

今一度、スタッフの働き方に目を配り、長く働いてくれる看護師を増やすことで患者離れを減らし、素晴らしい医療を提供していただければと思っております。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事の著者

原麻衣子

原麻衣子

外資系製薬企業においてMR(医薬情報担当者)を経験後、市立病院においての人事、給与、臨床研修プログラムの構築を担当。
その後、ベンチャー企業の人事を担当した後に、(株)メディエンスへ参画。
現在は、不妊治療関連を中心に、様々なWebコンテンツの制作、企画プロデュースに携わっている。

<関連サイト>
医療の人事ドットコム https://medical-jinji.com

この著者の最新の記事

関連記事

ページ上部へ戻る