診療報酬改定と患者さんの懐事情

 2018年度の改革の厳しさは、医療機関<保険薬局<製薬企業という印象で、「製薬企業では大規模なリストラをせざるを得ない」「医薬品卸のグループのうち、1つはなくなるのではないか」という物騒な声を耳にするようになりました。

 しかし、4月からの“変化”にもっとも敏感なのは「患者さん」なのかもしれません。『女性自身』は、「初診料が800円値上げも……4月に変わる医療・保険費のルール」と題する記事を3月26日にUPしました。

 “800円”の正体は、2018年度診療報酬改定で新設された「機能強化加算」(80点)です。地域包括ケアへの貢献を評価した地域包括診療料・加算、小児かかりつけ診療料などの届け出をしている診療所又は200床未満の病院の初診料に加算できる項目です。例えば、私が受診した際に、私のかかりつけ医は私に「地域包括診療加算」を算定していませんが、同加算を届け出ていれば初診料に80点が加算されます。この仕組みは、患者さんに驚かれるかもしれません。

 「地域包括診療料」は月1560点or1503点という高い評価がされている項目ですが、算定すると患者さんの負担額は従来の3倍程度になると言われています。そのため、医師の説明に納得して同診療料の算定に同意したにもかかわらず、翌月から受診しなくなったというケースをよく耳にします。患者さんは医師には「嫌です」とはなかなか言えないのかもしれません。「機能強化加算」(80点)はそこまで高額ではありませんが、3割負担なら240円の負担増になります。

 先日、『下流老人』などの著者である藤田孝典さんの講演を聴きました。藤田さんによると、 高齢者の貧困率は19.4%なのですが、これが単身では男性38.3%、女性52.3%まで貧困率が引きあがるそうです。

 下流老人とは、「あらゆるセーフティネットを失った状態」のことを指し、大きくわけて4つの下流化のパターンがあると藤田さんは指摘していました。

【パターン①】病気や事故による医療費負担

 Yさん60代男性。2度の心筋梗塞で貯蓄がゼロに。差額ベッドなどの保険外の長期療養費が負担に。

【パターン②】子供のパラサイトによる共倒れ

 子供が“むくわれない働き方”でうつ病に。

【パターン③】熟年離婚による資産分与

 夫にとっては青天の霹靂。

【パターン④】認知症による防衛力の低下

 金銭被害。

 年金額が減少したことで“使えるお金”が減少。そこに医療・介護費がかさむと貧困のリスクが高まるということでした。

 診療報酬改定のタイミングは、「受診抑制」「受診中断」のリスクが高まるタイミングでもあることを意識する必要がありそうです。ちなみに、2018年8月から再度、高額療養費制度における70歳以上の方の上限額が変わります。「低所得者」は変更ありませんが、年収156万~約370万円の「一般」と「現役並み」の方は負担増になります。

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この記事の著者

川越満

川越満

1970年、神奈川県横浜市生まれ。

1994年米国大学日本校を卒業後、製薬企業向けのコンサルティングを主業務とするユート・ブレーンに所属。

コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備える「コンサナリスト」(商標登録済)として、講演活動、書籍の出版プロデュースなどで活躍中。

医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。

現在は「業界入門書の制作」と「医師とMRの相互理解促進」を使命として、役立つコンテンツを生み出しつづけている。著作は30冊以上。肩書の「コンサナリスト」とライフワークの「セルフ・ブランディング」を10年前の2004年に商標登録している。

URL:https://consunalist.jp/

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