魅力ある街づくりには、質の高い医療サービスが不可欠

 「今年医学部に入学した学生が一人前の医者になり、医療の現場で活躍する頃には勤務医の年収は3割減、自由開業医制はなくなっているだろう」--。先日、ある病院団体の幹部が講演の際に“予言”していたことです。

 医療従事者の需給に関する検討会に示された医師需給のデータによると、中位推計においては、2024年(平成36年)頃に、上位推計(様々な前提・仮定のうち、最も医師の需要推計が大きくなる組み合わせで行った推計)においては、2033年(平成45年)頃に均衡すると推計されており、2040年には、上位推計でさえも約1.8万人程度、供給が需要を上回ることが推計されています。

 医師の需給よりも、心配なのは人口構造の変化です。各市区町村の人口推計をみると、今後の医療提供体制を抜本的に見直さなければならないことを感じます。日本創成会議・人口減少問題検討分科会が2014年にまとめた「全国市区町村別「20~39歳女性」の将来推計人口」によると、全国の49.8%に当たる896市区町村が「消滅可能性」があると指摘されました。

 「消滅可能性地域」とは、2010年~2040年にかけて20~39歳の若年女性が半分以下に減る自治体のことであり、秋田、青森、島根、岩手に多くみられますが、東京都豊島区のような都市部にも存在します。ちなみに、筆者が住んでいる横浜市南区は-33.2%であるため消滅可能性には含まれませんが、3割を超える減少幅です。

 消滅可能性地域ではないからと言っても安心はできません。-45.4%の大分県杵築市では家賃1000円・管理費3700円の1Kアパートが不動産情報サイトに紹介されて話題になっています。キャノンの工場撤退がその要因と言われていますが、自分がこの賃貸アパートのオーナーだったら絶望すると思います。

 不動産業界の知人によると、今後の不動産の価値は▽価値が維持または上昇する地域▽価値がマイナス~半減になる地域▽ほぼ無価値になる地域--の3レベルに分化していくそうです。家賃1000円のアパートは、まさに3番目の“ほぼ無価値”になった地域ということになります。

 自分の医療機関や薬局がある地域が“ほぼ無価値”になっても良いと考える先生はいないと思います。拙著『地域包括ケアとは、○○である』はホームページからの直販のみで販売しているのですが、先日、長野県飯田市にあるカレー屋さんから注文が来ました。なぜ、カレー屋さんが地域包括ケア???と思い、すぐに購入理由をメールで尋ねました。すると、カレー屋さんから次のような返信が来ました。

 「10年後にリニア飯田駅が開業する、ここ飯田市は「地域包括ケア」の街とかになるのもアリなのかな?と感じまして、理解できるかわからないなりに川越さんの本を読んでみよう!と思った次第です。品川から約30分で飯田に来ることができる訳ですから、都会にいるケアの必要な方をドンドン連れてきて、町ぐるみでケアする。そんな町の形も地方が生き残る手段になるのでは?とおもい購入させていただきました」

 非常に驚くと同時に感激しました。地域包括ケアについて、カレー屋さんまで考えるようになったのです。他の地域に住んでいる人が「移住したい!」と思える街づくり。それには、充実した医療サービスが不可欠です。

 ぜひ、先生方には自治体とともに、地域の価値を上げる街づくりにも取り組んでいただきたいと思います。

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この記事の著者

川越満

川越満

1970年、神奈川県横浜市生まれ。

1994年米国大学日本校を卒業後、製薬企業向けのコンサルティングを主業務とするユート・ブレーンに所属。

コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備える「コンサナリスト」(商標登録済)として、講演活動、書籍の出版プロデュースなどで活躍中。

医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。

現在は「業界入門書の制作」と「医師とMRの相互理解促進」を使命として、役立つコンテンツを生み出しつづけている。著作は30冊以上。肩書の「コンサナリスト」とライフワークの「セルフ・ブランディング」を10年前の2004年に商標登録している。

URL:https://consunalist.jp/

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