なぜ、医師への不満が相談件数の上位なのか?

 2月4日に開催された「日本医療マネジメント学会 第12回和歌山支部学術集会」で、認定NPO法人 ささえあい医療人権センターCOMLの山口育子理事長の講演を聴きました。私は、午前中に「地域医療構想と地域包括ケア時代への対応」について講演させていただいたのですが、山口理事長の講演を聴くために、17:00過ぎまで会場にいました。

 1990年に活動をスタートしたCOMLは、これまで5万7000件以上の相談を受けており、患者と医療者が対立するのではなく、“協働” する医療の実現を目指している組織です。医療者側だけでなく『新・医者にかかる10箇条』など、患者側への提言も行っています。

 今回の講演では、2015年度における「項目別相談件数」のデータが紹介されました。過去は「ドクターへの不満」が不動の1位でしたが、15年度は「症状について」がわずかに「ドクターへの不満」を上回っています。これは精神疾患のリピート相談が増えていることなどが原因のようです。

 不思議なのは「薬の相談」で「薬剤師の話が出てくることはほとんどない」ことです。これについて山口理事長は、「薬に限らず、日常生活、リハビリなど、すべての期待が医師に集中しているからではないか」と話していました。

 昨今の医療では「チーム医療」が重要視されており、診療報酬においてもチーム医療の促進を後押ししてきました。例えば▽緩和ケア診療加算▽医療安全対策加算▽退院支援加算▽褥瘡ハイリスク患者ケア加算▽糖尿病合併症管理料▽外来緩和ケア管理料▽心大血管疾患リハビリテーション料▽重度認知症患者デイ・ケア料――などの項目がチーム医療を評価したものとして挙げられます。

 しかし、患者側には、このチーム医療の姿が見えているでしょうか。山口理事長は、「患者さんに『看護師の専門性はなんですか?』と聞いてもほとんど答えられない」と指摘していました。同様に「薬剤師の専門性や、具体的に何をしてくれる職種なのか」と聞けば、「薬を出してくれる人」くらいのイメージしか持っていないのではないでしょうか。

 各職種の人が「私の専門は〇〇です。患者さんの〇〇をサポートさせていただきます」と自己紹介する場面があると良いですが、ここは医師側から各職種の役割を患者さんに伝えるような機会を持つことも必要なのかもしれません。

 自分(医師)に集中している「期待」を、医療チームの仲間に“分散”させることも、患者さんの治療意欲と満足度を高め、同時に医療関係者のQOW(Quality of Work)を向上させることになるかもしれません。

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この記事の著者

川越満

川越満

1970年、神奈川県横浜市生まれ。

1994年米国大学日本校を卒業後、製薬企業向けのコンサルティングを主業務とするユート・ブレーンに所属。

コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備える「コンサナリスト」(商標登録済)として、講演活動、書籍の出版プロデュースなどで活躍中。

医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。

現在は「業界入門書の制作」と「医師とMRの相互理解促進」を使命として、役立つコンテンツを生み出しつづけている。著作は30冊以上。肩書の「コンサナリスト」とライフワークの「セルフ・ブランディング」を10年前の2004年に商標登録している。

URL:https://consunalist.jp/

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