ライバル同士でも手を組む

 未曽有の高齢社会を迎える2025年以降に向け、我々が最も捨てなくてはいけない概念は「一人勝ち」です。ある急性期病院が地域で一人勝ちを狙って、地域のシェアを拡大していけば、ある程度までシェア拡大を実現するかもしれません。しかし、一人勝ちを目指したことで他院が“撤退”してしまった後に、医療需要が拡大したら、どうなるでしょうか。このことは、外来や在宅医療の領域でも言えます。
 2015年7月9日、地域包括ケアの時代を象徴する締結が行われました。神奈川県横浜市の保土ヶ谷区及びその周辺地域における地域医療全体の質の向上を図り、地域包括ケアの実現に向けた地域医療連携体制を構築していくことを目的とし、「横浜保土ケ谷中央病院」「聖隷横浜病院」「横浜市立市民病院」の3病院が「地域医療連携協定」を締結したのです。
http://hodogaya.jcho.go.jp/3hospital_renkei/

 3病院の院長は次のようなコメントを発表しています。
「超高齢社会を迎えた横浜市では、市民の皆様が充実した医療・介護サービスを利用しながら、住み慣れた地域で安心して生活できるための「地域包括ケアシステム」の実現が急務となっています。
今回協定を締結した3病院は、それぞれ設置主体の異なる病院ですが、共に急性期医療を担う病院として、横浜市における地域包括ケアシステムの実現に貢献したいと考えています。
また、私たち3病院が立地する保土ヶ谷区は、横浜市の中央部にあり、今回の協定締結をきっかけに、周辺の医療機関や介護・福祉の関係機関との連携の輪が更に広がることを目指し、それぞれの病院が持つ医療機能を最大限に活用し、相互に協力しながら地域医療全体の質の向上を図ってまいります。」
 これまでは、急性期病院と回復期病院、診療所などが連携するケースはありましたが、今回のように、急性期病院が連携するというのは珍しいケースです。締結内容は以下の3つです。
(1)3病院が有する医療資源を活かした連携の推進
(2)3病院が共同して、地域医療全体の質向上に資する事業の実施
(3)その他、医療・介護サービスを効果的・効率的に提供していくためのネットワーク構築等体制づくりに関すること
 3病院が手を組むことにより、周辺の医療機関や介護・福祉の関係機関との連携の輪が更に広がることが期待できます。

 経営の優先順位の上位に「地域医療への貢献」を掲げるのであれば、まず地域の現在と未来の課題を抽出し、ライバルと手を組むことも選択肢の一つに入れる必要があるかもしれません。

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この記事の著者

川越満

川越満

1970年、神奈川県横浜市生まれ。

1994年米国大学日本校を卒業後、製薬企業向けのコンサルティングを主業務とするユート・ブレーンに所属。

コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備える「コンサナリスト」(商標登録済)として、講演活動、書籍の出版プロデュースなどで活躍中。

医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。

現在は「業界入門書の制作」と「医師とMRの相互理解促進」を使命として、役立つコンテンツを生み出しつづけている。著作は30冊以上。肩書の「コンサナリスト」とライフワークの「セルフ・ブランディング」を10年前の2004年に商標登録している。

URL:https://consunalist.jp/

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