勤続年数を問われる意味

 地域包括ケアシステムについて厚生労働省は、「地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制」と説明していますが、各都道府県の在宅医療・介護連携拠点事業により、これまでつながっていなかった職種間・施設間のネットワーク(絆)をつないでいくものと説明するほうが、分かりやすいかもしれません。

 当然、地域包括ケアにおいては、すべての関係者が“地域の専門家”になることが求められます。人口・疾病構造の変化はもちろんのこと、その地域独自の文化や経済状況、地域包括ケアに役立つリソースを把握しておくことが求められます。

 こうした考えが、2016年度の調剤報酬改定に盛り込まれました。まず、「基準調剤加算」(32点)が一本化され、施設基準に次のような文言が盛り込まれました。
「管理薬剤師は5年以上の薬局勤務経験があり、同一の保険薬局に週32時間以上勤務しているとともに、当該保険薬局に1年以上在籍していること」

 同様に、患者さんに“ご指名”されないと算定できない「かかりつけ薬剤師指導料」(70点)においても、3年以上の薬局勤務経験、同一の薬局に週32時間以上勤務、当該薬局に半年以上在籍していなければ算定できないことが示されています。さらに、患者さんから24 時間相談に応じる体制をとり、開局時間外の連絡先を伝えるとともに、勤務表を作成して患者さんに渡すことも求められています。相当な「覚悟」がないと、「かかりつけ薬剤師指導料」は算定できないでしょう。

 「かかりつけ薬剤師指導料」の施設基準を眺めながら思い浮かんだのが、ネットやアプリからスタイリストなどをご指名予約できる「ホットペッパー ビューティー」です。近い将来、説明を受けたい薬剤師を直接予約できるサービスが生まれるかもしれません。

 スタイリストは選ばれなければ生き残れないことを自覚しています。しかし、薬剤師はどうでしょうか。「かかりつけ薬剤師指導料」を算定させてくれる患者がいなければ、職を失うと考えている人は、まだ少ないかもしれませんね。

 ネットで薬剤師の声を拾ってみると、「今まで仲良くしていた患者に、同指導料の同意を求めて断られたらショック」という意見がありました。

 2016年度の診療(調剤)報酬改定では、かかりつけ医師とかかりつけ薬剤師の連携を評価した項目が出てきています。このコラムをお読みいただいている医師の先生には、ぜひ、薬剤師をモチベートする役割も期待したいと思います。

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この記事の著者

川越満

川越満

1970年、神奈川県横浜市生まれ。

1994年米国大学日本校を卒業後、製薬企業向けのコンサルティングを主業務とするユート・ブレーンに所属。

コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備える「コンサナリスト」(商標登録済)として、講演活動、書籍の出版プロデュースなどで活躍中。

医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。

現在は「業界入門書の制作」と「医師とMRの相互理解促進」を使命として、役立つコンテンツを生み出しつづけている。著作は30冊以上。肩書の「コンサナリスト」とライフワークの「セルフ・ブランディング」を10年前の2004年に商標登録している。

URL:https://consunalist.jp/

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