患者負担は同じ3割でも1.5倍になっている

 世界の医薬品売上ランキング2014のベスト10のうち、バイオ医薬品が7品目を占めています。バイオ医薬品は低分子医薬品と違って高額であることで知られています。近年、国は後発医薬品の使用促進を掲げ、数量シェア80%を目指すとしていますが、低分子医薬品を後発医薬品に切り替えても、そこにバイオ医薬品が1つ加われば、“節約の努力も水の泡”になると指摘されています。

 医薬品の価格の高騰を象徴するのが、院外処方せん1枚当たりの単価の推移です。調べ物をしていたら、12年以上前に書いた原稿が出てきました。

「処方せん1枚当たりの金額がもの凄い勢いで上昇している。日本薬剤師会によると、2002年8月分の1枚当たり金額は6038円にも達している。この10年間に消費者物価指数は10%程度しか上昇していないのに、処方せん1枚当たりの金額は2.2倍に急騰している。まさに“処方せんバブル”である」(「医薬経済」2003年1月号)

 サラリーマンの自己負担が1割だった頃の処方せん単価が3000円程度でしたから、その当時から単価が倍になり、負担率が3倍になる衝撃を表現したかったのだと記憶しています。

 現在の処方せん単価はどれくらいなのでしょう。2015年2月における処方せん1 枚当たり調剤医療費を都道府県別にみると、全国では9005円(伸び率1.9%)で、最も高かったのは石川県(1万1016円(伸び率0.3%))、最も低かったのは佐賀県(7692円(伸び率3.4%))でした。

 同じ3割負担として計算すると、この約12年半で患者負担は約1800円→約2700円に増えていることになります。なんと、50%増です。この間、長期処方が増えたことを差し引いても、消費者物価がそれほど上昇していない中で、負担増がどうしても目立ってしまいます。

 糖尿病ネットワークが実施した「インスリン療法と医療費に関するアンケート」によると、9割の患者さんが医療費が「負担」と感じおり、特に20~30歳代では「たいへん負担である」と回答した割合が高くなっています。
 http://www.dm-net.co.jp/enq/002/

 負担増が「受診中断」の要因になることが指摘されています。昨年まとめられた「糖尿病受診中断対策マニュアル」と「糖尿病受診中断対策包括ガイド」(研究代表者:国立国際医療研究センター野田光彦部長)には、受診中断の理由に「医療費が経済的に負担であるから」を理由に挙げた人数が多かったことが紹介されており、「糖尿病の診療は定期的かつ永続的に持続する上に、糖尿病は複数の薬剤の投薬が必要なことがしばしばあり、新薬が多い疾患分野であるために単価が高い薬剤も多く、医療費の負担感が強い患者も多い。インスリンを使用している場合はなおさら」と指摘されています。

 バイオ医薬品を中心に、高額な薬剤が増えている中、受診中断を防ぐためにも“患者さんの懐具合”を考慮することも必要になりそうです。

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この記事の著者

川越満

川越満

1970年、神奈川県横浜市生まれ。

1994年米国大学日本校を卒業後、製薬企業向けのコンサルティングを主業務とするユート・ブレーンに所属。

コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備える「コンサナリスト」(商標登録済)として、講演活動、書籍の出版プロデュースなどで活躍中。

医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。

現在は「業界入門書の制作」と「医師とMRの相互理解促進」を使命として、役立つコンテンツを生み出しつづけている。著作は30冊以上。肩書の「コンサナリスト」とライフワークの「セルフ・ブランディング」を10年前の2004年に商標登録している。

URL:https://consunalist.jp/

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