地域包括ケアシステムで期待される“2つの顔”

 最近は「地域包括ケアシステム」に関連した講演依頼をいただくことが増えてきました。目標時点に設定されている「2025年」まであと10年になったからかもしれません。「あと10年」と言われると、「あっという間に来るかもしれない」という心理になるのかもしれませんね。

 地域包括ケアシステムとは、できる限り健康で、住み慣れた地域での生活を継続し、自宅で最期を迎えたいという国民の期待に応えるシステムです。主役は住民、専門職はサポーター、地域は舞台、行政は仕掛け人というイメージです。急性期から在宅医療・介護までの連携を切れ目なく行う一方、「21 世紀型のコミュニティの再生」を進めることになります。
 地域包括ケアシステムは「介護・リハビリテーション」「医療・看護」「保健・予防」「福祉・生活支援」「住まいと住まい方」という5つの構成要素(分野)から成り立ちますが、これらを医療や介護の専門職の先生方だけでカバーするのは不可能です。そこでポイントとなるのが、「自助」「互助」「共助」「公助」という4つの視点です。

 医療サービスや介護サービスは、「共助」(制度化された相互扶助。社会保険制度、介護保険制度)に相当しますが、他の「自助」(自分が主体となり、自らを支える)、「互助」(近隣の助け合い、ボランティア、NPO等による支援)、「公助」(行政による支援)がなければ、前述の5つの構成要素を満たすことはできません。

もう夜中なのに、隣に住んでいる独居の高齢者宅の雨戸が閉まっておらず、電気も点いている。ちょっと心配だから声をかけてみようかしら――これは「互助」になります。昔は日本全国で当たり前のようにあった習慣ですが、すっかり失われてしまっています。こうした「コミュニティの再生」も、地域包括ケアシステムの目標として盛り込まれています。なかでも、元気な高齢者は、地域包括ケアシステムにおいて重要な「資源」になります。彼らに「役割」を与えることで、健康寿命が延びることが期待できます。

 地域包括ケアシステム構築へ向けた取組事例については、すでに厚生労働省のページに公開されていますので、ぜひご確認ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/
 「行政と医師会の協働による在宅医療の推進と医療介護連携」を行っている千葉県の柏市では、「主治医・副主治医システム」を構築し、在宅医療従事者の負担軽減を支援しています。

 地域包括ケアシステムの中で、専門職である医療人に求められることは何でしょうか。私は2つあると思います。1つは、チーム医療を拡大し、例えば「医師がやる必要がないもの」「他職種のほうがうまくできるもの」は他職種に権限移譲し、一人でも多くの患者さんをサポートすること。世界的なベストセラーとなった『7つの習慣』で示された時間管理のマトリックスに言い換えると、“緊急ではないけど重要なこと”に時間をかけて地域包括ケアシステムにコミットすることでしょう。
もう1つは、「医療人の顔」と同時に「地域住民の顔」を持ち、コミュニティの再生のために、何が足りないのか、必要なのかを考えることです。先生方がチーム医療のさらなる拡大と、コミュニティの再生にコミットすれば、地域包括ケアシステムは2025年を待たずに完成するはずです。

この記事の著者

川越満

川越満

1970年、神奈川県横浜市生まれ。

1994年米国大学日本校を卒業後、製薬企業向けのコンサルティングを主業務とするユート・ブレーンに所属。

コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備える「コンサナリスト」(商標登録済)として、講演活動、書籍の出版プロデュースなどで活躍中。

医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。

現在は「業界入門書の制作」と「医師とMRの相互理解促進」を使命として、役立つコンテンツを生み出しつづけている。著作は30冊以上。肩書の「コンサナリスト」とライフワークの「セルフ・ブランディング」を10年前の2004年に商標登録している。

URL:https://consunalist.jp/

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