結果にコミットする

 パーソナルトレーニングジムの「ライザップ」のキャッチコピーは「結果にコミットする。」です。同ジムのテレビCMに出演している元プロボクサーで俳優の赤井英和さんは、トレーニングの結果、体重が77.1kg→70.1kg(7kg減)、体脂肪率が20.8%→13.2%(7.6ポイント減)、ウエスト100cm→84.5cm(15.5cm減)になり、“現役”当時の身体を取り戻したと言っています。他にもジムのホームページには「99%の人がやせている」と書かれています。

 あれだけテレビCMに投資しており、全国に25店舗も展開しているにもかかわらず、私の周りに「ライザップに通っている」という人はいませんでした。その理由がわかりました。料金が高いのです。入会金5万円+ボディメイクスタンダードコース(1回50分×16回/2ヶ月)が29万8000円ですから、税込で35万円以上かかります。たった2か月に35万円以上支払える所得層はそんなにいません。

 ようやく1人だけライザップに通っている薬局経営者に出会いました。彼からは太っていた時の写真と、トレーニング前後の検査値の比較を見せてもらいました。驚くほどの効果でした。しかし、食事制限が厳しくライスは禁止されているそうです。仮に「2か月間ライスを食べなかったら35万円あげる」と言われても私ならNO!と言います。

 「結果にコミットする。」ことは、医療機関にも求められるようになってきました。最も象徴的な項目は、2012年度の診療報酬改定で新設された「糖尿病透析予防指導管理料」(糖防管)です。2013年7月1日現在で1166病院+271診療所が糖防管を届け出ています。糖防管の施設基準には、「一年間に当該指導管理料を算定した患者の人数、状態の変化等について報告を行うこと」とあります。報告しなければならない項目は、糖防管を算定している患者さんのうち、(1)HbA1c、(2)Cre又はeGFR、(3)血圧――という3項目の改善又は維持が認められた患者さんの割合です。
算定している医療機関は、どのような結果を出しているのでしょうか?厚生労働省が2013年12月25日の中医協・総会に提出した資料によると、糖防管の算定患者のうち、「改善または維持が認められた者の割合」の平均は、血圧が69.1%、HbA1cが66.0%、腎機能が60.5%でした(2013年7月1日現在)。総会の資料では、「都道府県別の平均改善・維持率」が棒グラフで紹介されています。具体的な数値は定かではありませんが、3つの指数とも明らかに平均以上を実現しているのは、高知県、島根県、青森県の3県くらいしかありません。その他の都道府県は、全ての改善・維持率が50%未満の静岡県をワーストに、腎機能だけが他の2つの指標と比べて大幅に悪い地域(特に佐賀県と茨城県)が目立ちます。
 ライザップに行く人は、健康的で経済的に豊かで、高い向上心とモチベーションがあります。結果にコミットしているのは、ライザップだけではなく、会員も結果にコミットしているのだと思います。

 一方、生活習慣病の患者さんは、ライザップの会員とは“真逆”の人が多いのではないでしょうか?ご存じのとおり、2015年1月に高額療養費制度の見直しが実施されました。70歳未満を対象に、年収約770万円以上の人は負担が増える一方、年収約370万円未満の人は負担が減るという内容です。今回負担が下がる「年収約370万円未満」の人はどれくらい存在するかというと、住民税非課税を含めると5000万人以上もいます。70歳以上や後期高齢者を含めると、地域住民の約半分の人は所得が低いということなのです。

 今後の診療報酬改定において、生活習慣病関連の項目は糖防管のように「結果」を求めてくるようになります。ライザップの会員とは真逆の患者さんに対し、結果をコミットできる良医が、今後も地域や他の医療機関と医療・介護従事者から選ばれることになるでしょう。ちなみに、2015年度の介護報酬改定においても、アウトカム評価が増えそうです。

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この記事の著者

川越満

川越満

1970年、神奈川県横浜市生まれ。

1994年米国大学日本校を卒業後、製薬企業向けのコンサルティングを主業務とするユート・ブレーンに所属。

コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備える「コンサナリスト」(商標登録済)として、講演活動、書籍の出版プロデュースなどで活躍中。

医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。

現在は「業界入門書の制作」と「医師とMRの相互理解促進」を使命として、役立つコンテンツを生み出しつづけている。著作は30冊以上。肩書の「コンサナリスト」とライフワークの「セルフ・ブランディング」を10年前の2004年に商標登録している。

URL:https://consunalist.jp/

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