- 2014-9-28

ある製薬企業が患者さんと医師に実施した医療費負担に関する調査結果が面白いので、医療従事者に講演する際に紹介しています。
「より安価な製剤を医師に推奨されたら、それに切り替えたいと思いますか?」という問いに対し、8~9割の患者さんが「思う」と回答しています。
一方、「どのような条件がそろえば、より安価な製剤を処方したいと思いますか?」という問いに対し、約8割の医師が「患者自身からの希望」と答えています。
おかしいですよね?患者さんも医師も、相手が変われば受け入れると言っているのです。前回でも紹介した名著『学習する組織』で知られるピーター・センゲの名言に、次のようなものがあります。
「人差し指で他人を指してみてください。3本の指は自分の方を指してしまうのです」
つまり、他人を指摘したことは、3倍自分に跳ね返ってくるということをセンゲ氏は言っているのです。前述の調査結果では、患者さんと医師の関係において「あの先生が安い薬を選択肢として教えてくれたら」と患者が人差し指を医師に向けています。一方、医師は「患者さんから安価な薬を相談されれば、処方を変えるのはやぶさかではありませんよ」と患者さんに向けて人差し指を向けています。
しかし、中指・薬指・小指の3本の指は自分に向けられています。自分に向けられた3本の指は、「相手を指さす前に、あなたができることはないですか?」と問いかけているのです。患者さんから安価な薬の処方を医師にお願いするのは、心理的に難しいことです。「先生を不機嫌にさせてしまうかもしれない」という不安があるからです。一方、医師側に安価な薬の選択肢を提示することによって発生する、患者とのコミュニケーションリスクはあるでしょうか?ほとんどないと思います。むしろ、選択肢を提示するのは、患者さんの治療への参加意識を高めることにもつながります。
私が理事を務めているNPO法人では、自分のことも相手のことも同じように考える「個即全一」を体感できるトランプゲーム「黙示伝授セレモニー」(通称:黙伝※)を、主に子供たちに無償で届ける活動をしています。
自分のことも相手のことも同じように考える。良く言われるフレーズですが、頭では理解出来ても、毎日の生活の中で実践するのは難しいことですよね。黙伝には、他のトランプゲームのような勝ち負けがなく、4人1組で全員の夢(目標)が達成できるように支援し合うシミュレーションゲームなので、子供でも「個即全一」が体感できます。
9月20日には、さいたま市の小学校に行き、土曜チャレンジスクール※の一環として黙伝をプレイしてもらいました。
※さいたま土曜チャレンジスクール推進事業
http://www.city.saitama.jp/003/002/005/p010345.html
最初はルールを覚えるのに集中し、次に自分がどうすればうまくいくのか考えるようになります。そうすると、他の子が出したカードに対し、「なんでこのカードを出したんだ!」という感情が湧き上がってきます。しかし、時間がたつと、相手のことも考えるようになります。子供の適応力には感心します。
黙伝を体験した子供たちのように、医師も「患者さんの問題は自分の問題でもある」と捉えることのできる医師が良医だと思います。
<黙伝について私のホームページで紹介しています>
http://www.mitsurukawagoe.com/#!mokushidenjyu/c12lm