レベル2を越えるのが良医

2010年7月に医療関連サービス振興会の月例セミナーで講演させていただいた際に触れた「U理論」における4つのレベルは、患者さんが良医か否かを判断する目安になると思います。

『U理論』の翻訳を手がけ、『U理論入門』の著者である中土井僚さんによると、U理論とは、「過去の延長線上にない変容やイノベーションを個人、ペア、チーム、組織やコミュニティ、そして社会で起こすための原理と実践手法を明示した理論」です。興味がある方は、ぜひ書籍を手に取ってみてください。

私がU理論と出会ったのは、『学習する組織』で有名なピーター・センゲの『出現する未来』を読んだときでした。同書の中でU理論が紹介されていたのです。

そこには、分かりやすく、患者さんと医師の関係を4つのレベルで示していました。

レベル1:医師が患者の悪いところを診て治療するという対症療法のレベル。

レベル2:患者が病気になった原因となる行動に注目し、医師が患者に対して行動を改めるように指導する。

レベル3:ここからはハードルが高くなる。「なぜ、患者がそのような行動をとるのか、医師が患者と一緒になって考える」のだ。

レベル4:医師と患者がお互いに影響を与え合う関係になることだ。

 

1つめのレベルというのが、医師が患者さんの悪いところを診て治療するという対症療法のレベルです。そしてレベル2というのは、医師が病気の原因となった患者さんの行動に注目し、患者さんに対して行動を改めるように指導するレベル。生活習慣病や喫煙者を指導することなどが該当するかもしれません。

 

同書の中では、95%の患者と医師は、レベル2までの医療であるのが現状だと答えたことが紹介されています。

 

そして、レベル3になると医療従事者が患者さんに対して“共感”のゾーンに入ってきます。なぜ、患者さんがそのような行動(喫煙や過度な飲酒、ストレスフルな生活)をとるのか、医師が患者さんと一緒になって考えるレベルになります。

 

U理論のワークショップなどでは、日本人の若手タレントがアフリカ系民族の家などに行って、食事をご馳走になったり、一緒に生活をしたりするテレビ番組が“共感”の事例として紹介されています。目の前で鶏の首を切ったりするシーンが出で、女性タレントが泣くというのが予定調和としてあります。しかし、そこの住民たちは彼女がなぜ泣いているかわからない。

今度は逆に、住民を日本に招待します。お寿司屋さんに連れて行き、目の前で板前さんが魚をさばく姿を見せます。すると、今度は逆に住民のほうがショックを受けるわけです。そして「私が鶏を殺してあなたに食べさせようとした時に、あなたが泣いた理由がやっとわかった」と話します。これが、本当の共感のレベルです。

小児科の医師が不足しているある地域では、お母さん同士が集まって、お医者さんが大変だからちょっとした熱くらいでは小児科に掛からない様にしようと約束して、非常にうまく行っている地域があります。それはまさにレベル3のゾーンに入っていると思います。お互いの立場を共感し合って、調和するレベルです。厚生労働省が目指している地域包括ケアシステムは、プレイヤー全体がレベル2を越えてレベル3に行かないと成功しないでしょう。

 

最後のレベル4とは、医師と患者さんがお互いに影響を与え合う存在になることです。患者さんと中身の濃い話をしているうちに、まったく新しいことを発見することなどが『出現する未来』では紹介されています。そして、ほとんどの医師と患者さんがレベル3と4の関係を望んでいることも。

 

この記事の著者

川越満

川越満

1970年、神奈川県横浜市生まれ。

1994年米国大学日本校を卒業後、製薬企業向けのコンサルティングを主業務とするユート・ブレーンに所属。

コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備える「コンサナリスト」(商標登録済)として、講演活動、書籍の出版プロデュースなどで活躍中。

医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。

現在は「業界入門書の制作」と「医師とMRの相互理解促進」を使命として、役立つコンテンツを生み出しつづけている。著作は30冊以上。肩書の「コンサナリスト」とライフワークの「セルフ・ブランディング」を10年前の2004年に商標登録している。

URL:https://consunalist.jp/

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