お薬手帳を活用する

大阪にある某クリニックが、ホームページに「お薬手帳」のことを書いていました。そこには、お薬手帳に記載されると患者負担が高くなるから、持っていかないようにしましょうと書いてありました。そして、必ず明細書を確認して「薬剤服用歴管理指導料」が“41点”ではなく“34点”になっているか確認し、41点になっていたらクレームを入れるように注意喚起していました。

このクリニックの院長は、患者さんの“真のエージェント”でしょうか?。私は仕事上、医師向けにアンケート調査を実施しています。先日、調剤薬局に関するアンケートを実施したのですが、多くの医師が薬局薬剤師に対して信頼していないどころか、嫌悪感をあらわにする意見を自由記述で書かれていたことに驚きました。

疑義照会のプロセスが、医師が薬剤師を嫌いになるきっかけになるという話をよく聞きます。薬局から疑義照会が来るタイミングは、すでに医師が数人後の患者さんを診ているタイミングであり、かつ、その内容がチープであれば、嫌悪感を抱くのは仕方のないことかもしれません。しかし、嫌なプロセスであれば、お互いに変えていけば良いと思います。

お薬手帳を持っていかないことで20円安くなることは、経済的には確かに得をします。しかし、その行為は薬剤師さんの業務を非効率化させ、患者さんと薬剤師のコミュニケーションが円滑に行われなくなる恐れがあります。結果として、患者さんが自分の疾患をより良くマネジメントするという目標から遠ざかる行為になります。

ある薬局では、前回調剤した薬がそれぞれいくつ残っているかお薬手帳に記載してもらっています。ある薬剤だけ他よりも残っていれば事情をうかがい、処方医にFAXで患者さんの服薬状況を説明し、処方変更等を提案しています。私のお薬手帳には、直近の検査値を縮小コピーした用紙が貼ってあります。薬局の薬剤師さんに私の検査値を知っていただいた上で、服薬指導を行っていただいたほうが、良いコミュニケーション、結果に結びつくと考えているからです。

2014年度診療報酬改定では、主治医機能を評価した「地域包括診療料」(包括点数)と「地域包括診療加算」(出来高点数)が新設されました。算定要件には、「療養上の指導、服薬管理、健康管理、介護保険に係る対応、在宅医療の提供および当該患者に対し24時間の対応等を行っていること」などが盛り込まれており、“服薬管理”が重要視されています。この点数を算定するには、受診時にお薬手帳を確認する必要があります。この2つの項目が新設されたことをきっかけとして、医師がお薬手帳を活用する動きが活発化することを期待しています。

無論、調剤報酬をもらうためにお薬手帳を渡しているような薬局は、批難されても仕方がありません。しかし、医師には、冒頭のクリニックのようにお薬手帳を持っていかないことを推奨するのではなく、どうしたらお薬手帳を活用して、患者さんの疾患をより良くマネジメントするか?ということを考えていただければ嬉しいです。そのことができるのが良医だと思うのです。

お薬手帳、そして薬局をどう活用したらそれぞれの能力を最大化でき、患者さんにとって最大のメリットを与えることができるのか。ぜひ、処方せんを受けている薬局と話し合っていただければと思います。

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この記事の著者

川越満

川越満

1970年、神奈川県横浜市生まれ。

1994年米国大学日本校を卒業後、製薬企業向けのコンサルティングを主業務とするユート・ブレーンに所属。

コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備える「コンサナリスト」(商標登録済)として、講演活動、書籍の出版プロデュースなどで活躍中。

医療・医薬品業界のオピニオンリーダーとして、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』、マイナビ2010『MR特集』、女性誌『anan』など数多くの取材を受けている。

現在は「業界入門書の制作」と「医師とMRの相互理解促進」を使命として、役立つコンテンツを生み出しつづけている。著作は30冊以上。肩書の「コンサナリスト」とライフワークの「セルフ・ブランディング」を10年前の2004年に商標登録している。

URL:https://consunalist.jp/

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