ミオ・ファティリティ・クリニック訪問記(鳥取県米子市)

今回は鳥取県米子市のミオ・ファティリティ・クリニックへ行ってまいりました。
なんと前回のオールアバウト取材から10年以上経っているのですが、見尾先生に学会やイベント、映画製作でもお世話になっている事もあり、久しぶりという感覚があまりありませんでした。
今回のインタビューは名医・良医ドットコムとしての取材となりましたが、前回同様、熱のこもった内容になりました。ぜひ、多くの方にご覧頂ければと思います。それではどうぞ~!!

 

●以前、取材させていただいたのは2004年9月だったので、11年前になります。見尾先生のところで、この10年くらいでどんな変化があったかを教えていただけますか。

M:その頃は、タイムラプスが動き始めた頃でしたね。ここ10年は、本当にタイムラプスと共に歩んできました。自分で言うのも変ですが、タイムラプスという手法は、生殖医療領域の大きなブレイクスルーになり、商品化までされましたので、経済効果としては大きかったのではないかと思います。私たちには何も経済的メリットはないのですけどね。

ただ、今まで教科書的に何もわからなかった胚の発生、生命の誕生の仕組みとかが可視化できるようになり、医学的には価値が高いのではないかと思っています。そして、国内、国外の各学会で高評価を頂きましたが、それはそういう価値を示しているのではないかなと思っています。

 

●もう今や、タイムラプスは不妊治療で大事な一つのツールになっていますね。

M:一般的にはそうですね。でも、僕たちのタイムラプスは、ツールというよりは「考え方」ですね。胚の発生が可視化されてみて、胚の発生の生殖生理学的な解明に緒を掴んだのではないかなと思っています。しかし、タイムラプスですべて解明できるわけではないし、未だ細胞の中で何が起こっているかは全然わからない状態です。

でも形態学的に見える動きの中で、細胞の中で何が起こっているかを予測、あるいは推測するところまでは行きつきかけています。それを起点として、細胞の中の現象を分子生物学的に解析をしています。そこに繋ぐために、世界各国の研究者達が共同研究をしようという話を持ちかけてくれています。僕はバイオロジーの最先端の研究者と一緒に仕事をさせてもらえるということを、本当にこんな光栄なことはないなと思っています。ありがたいですね。

タイムラプス装置はオーストラリアの友達から「こういうのを作ってみようよ」と話をもらい、彼らがイメージしているものを作ってみたけど全くうまくいかず、僕たちが独自に作ったんですね。うまくいくことを約束されていない、出来上がるかどうか、全くわからない状態でしたが、胚に対する侵襲を極限少なくし、長期間培養可能な装置という理想を追い求めて試行錯誤の繰り返しでした。全くの偶然の産物としてうまく出来上がったんです。

結果を求められていなかったし、うまくいくことを前提に作っていなかったので、僕はいつも「道楽」と言っています。どれだけのお金が必要なのか、結果がどうなるのかを度外視して、とにかく面白いものを作ろうという心意気でやってきた結果です。本当に道楽の世界でやっていて、それがたまたま繋がったということでした。
おそらく研究施設が科学研究費をもらって行うような研究の進め方では、たぶんできなかったでしょうね。
ハンドクラフトで装置を自分達で作るのですが、出来上がることが約束されていないテーマには、お金は投資されませんからね。

ヨーロッパ中世のクラシック音楽、絵画や他の芸術などは、一部の裕福な貴族たちの権威の象徴、言葉を変えると、道楽により出来上がっていると思います。大きなブレイクスルーの一つのあり方だと思います。

 

●遊び心からいいものが生まれてくるということですね。

M:「道楽」じゃないもっといい言葉がないかと言われますが・・・ でも、例えば本田宗一郎氏などにしても、「こんなものを作りたいな」と言ってそれをやり遂げましたよね。男のロマンの中でやっているということなんでしょうが、ロマンなんて、かっこよすぎて言わないだけで・・・・ それで、これが商品化されて、膨大な経済効果まで生まれちゃいました。

 

●これの特許はとられなかったんですか。

M:特許を取る前に、発表しちゃいました。もともと取るつもりもなかったんです。「こんなものが見られるようになったよ」と、とにかくみんなに早く見て欲しかったんです。それに、金儲けに関しては、完全に無知だし、興味がないんです。僕は、一応食事ができて、寝るところがあれば、あとは何でもいいやという感じです。これを患者さんのために活かせば、あるいは、僕と同じ分野の人たちに自由に使えるものを自分が提供できればいいな、とだけ思っていました。

 

●これらには相当費用と労力がかかったのではないですか。

M:それもそうですが、もっと大きかったのは、これに協力してくれた「人」ですね。今まで、他に先んじていち早く手がけ、評価を頂いている事項がいくつかありますが、その節目節目に必ず誰かキーパーソンがいるんです。しかも、不思議と、協力を申し出て頂いた方がほとんどです。

タイムラプスに関しては、僕たちの動画を見て感動され、一緒にやらせてくださいと言ってくださった人とか、他の領域の研究者から、思いがけない提案、情報を頂き、その方々と連携ができたり、そういう人とのめぐり合わせが、すごかったなと思います。自分はなんと幸運な男なんだろうと思っています。

そういう風に言ってきてくださる方たちは、みんな同じ感性、思いなんです。自分のためでなく研究のために、患者さんのために、世界のために役に立ちたい、新しいものを開発したいという情熱や志を持った人です。ですから、そういう方とは、本当に長く良い関係でいられますね。これは本当にすごいことだなと思います。僕は、完全に無防備なんですが、本当に、僕に係ってくださるみんなが善人でした。

 

●スタッフさんも、みんないい人たちがそろっていると思いますが、なぜこのように集まって来てくれるのでしょうか?

M:私は、善人説を信じて生きていて、スタッフも善人で、考え方が常に前向きな人たちが僕の仲間でいてくれています。今、施設のモットーの一つとして、「利他の心」を掲げています。相手のをために自分がどうあるべきかを考えることが、僕の基本ですし、この組織を支えてくれる人たちの共通の認識です。だから、ここまでうまくいったのではないかなと思っています。

現在は、利己的発想が大部分を占め、自分のエゴばかりを主張できる世の中になっているような気がします。日本中がそうなっていると思うのです。こういう時代にこそ、「利他の心」を持ち、他の人の痛みをわかろうとする気持ちを持たなければいけないし、そういう気持ちを持って医療に携わる人が一人でも多くなってほしいと思っています。

いつもスタッフにする話なのですが、僕が医師になりたての頃、ある先輩から「お前を医者にするために、どれだけの税金が使われているかを考えなさい。少なくとも毎月100万の税金が使われている。
そのおかげで医者になるんだから、医者になったら今度は、そのお返しで、とことん社会に尽しなさい」と言われていたんです。

その当時は、多くの医者が自分を犠牲にし、患者さんのために、社会のために尽くしていたと思います。ですから、医師は尊敬され、医師の優遇税制も通用した時代だと思います。
しかし、時代とともに、医師を含めて国民全体がどんどん自分中心に変わっていき、そういった「世のため人のため」という感覚を失ってきたと思います。

志を持たない、持てない社会になってきたと思います。
僕はどうしても無防備、お人好しでしか生きられないようです。ある意味、騙されても仕方ないと思っているんです。そうすると、意外と下心ある人達は近づきにくいらしく、本当に多くの前向きで、心根の優しい素晴らしい方々との輪が広がっている気がします。

僕はとにかく自分のことはさて置き、患者さんのためにと考えています。少しもっともらしいことを言うと、生殖医療というツールを使って世の中に「利他の心」を広めたいと思っていて、いろいろなところに出掛けて行って自分の思いや生命の尊さなどをお話しています。話の中で、タイムラプスの映像は、多くの方々に強いインパクトを与え、僕の話に花を添えており、これが自分に与えられている責務なのかなと思ったりしています。

 

●次に、JISARTのお話を聞きたいと思っています。先生方が集まって、自分たちで基準を作るということはすごく画期的なことだと思います。会長として、今後のJISARTはどうなっていくかを教えていただけますか。

M:僕は、高品質の生殖医療施設を全国に作ろう(これがJISARTの理念)という話を受けて、即断しましたが、その当時の生殖医療の状況と現状はほとんど何も変わっていません。十数年経過しましたが、生命倫理、法整備等、全く不十分です。生殖医療に関する知見や技術は、大きく発展してきているし、海外の状況も大きく変わってきている中で、日本がどういう立ち位置に立つのかでしょう。

そのような現状の中で、JISARTが患者さんのために安心安全で質の高い医療を提供する、そして、自助努力と相互審査により、常に高品質の医療施設を追い求めるという考え方は決して色あせていないと思っています。私は、会長として会員の先生方にJISART立ち上げの理念を忘れず、継続することを訴え続けています。ですから、これからも、患者さんに最も寄り添った安心安全の医療施設で在り続けたいと思っています。

 

●今後、米子で行われる日本受精着床学会総会(2017年)についてコメントをお願いします。

M:僕は田舎の一臨床医に日本受精着床学会の学会長を指名頂けたのは、やはり、40年近くの長い生殖医療への取り組みと10年来のタイムラプスの仕事、だと思っています。ですから、僕の集大成としても、この学会を出来るだけ内容の濃いものにして、参加頂く学会員の方々に学びの場を提供したいと考えています。世界の最先端で臨床に研究に活躍しておられる専門家に多数お集まり頂き、最もホットなお話をお聞きできたらと思っています。学会のテーマを「生殖医療の未来をみすえて –Happiness of Child, Welfare of Family-」とし、生殖医療の先に見える新しい生命や家族にまで思いを馳せた内容としたいと考えています。

特別講演や教育講演は、並列にならないような構成とし、参加者が聞き逃すことのないよう配慮したいと考えています。また、シンポジウム、ワークショップ、等は、各専門領域(産婦人科医師、泌尿器科医師、胚培養士、看護師、心理カウンセラー、等)に特化したテーマを選び、それぞれの領域の参加者に大いに盛り上げて頂きたいと思っています。

アクセスの良くない地方での開催ですので、せっかくお越し頂いた方々に、この学会で世界の動向や充実の内容、地方色豊かな催し、などを堪能して頂き、来てよかった!と実感して頂けるような学会にできればと願っています。

また、この学会は木曜日、金曜日ですが、その後の土曜日、日曜日には種々のイベントも検討中で、そちらも楽しんで頂ければと思っています。土曜日には、公開講座や若い先生方向けの生殖医療フォーラムならびにハンズオンも企画中で、今後の生殖医療を担う若手の先生方の発掘につながればとも考えています。

このフォーラムでは、僕達の施設を開放して、生殖医療の魅力や醍醐味の一端を感じて頂ければと思います。

国内の生殖医療に携わる多くの方々が一人でも多くご参加頂き、満足して頂ける学会を準備したいと少数精鋭で努力しています。皆様のご参加を心よりお願い致します。

 

まとめ

このインタビューの後に見尾先生と不妊治療の業界についての意見交換をさせて頂いたのですが、やはり利他の精神を説く先生から見ると今の利己的で末期的な状況はかなりの危機感を持たれていることが分かりました。

私も取材を重ねてきて、この医療機関はどう考えてもおかしいと思うところがメディアに取り上げられて、人気になっていたり、どう考えても妊娠率は低いだろうと思うところが、カリスマになっていたりとおかしなことになっています。

不妊治療を愛し、これをライフワークとして取り組んできた先生方は誰なのか?どれだけの実績を積んで患者さんに向き合っているのかをもっと正確に伝えないといけないなと感じた取材でもありました。

見尾先生、東さん、今回もお忙しい中、貴重なお時間を頂戴し、ありがとうございました。この場をお借りし、心より感謝申し上げます。

関連サイト

ミオ・ファティリティ・クリニック http://www.mfc.or.jp/index.htm

日本受精着床学会 http://www.jsfi.jp/

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【名医情報詳細】

クリニック名 ミオ・ファティリティ・クリニック
住所 〒683-0008
鳥取県米子市車尾南2-1-1
電話番号 0859-35-5211
営業時間 産科/婦人科外来
 月〜土(9:00〜12:00) 月・水・金(3:00〜6:30)
不妊外来
 月〜土(9:00〜12:00) 月・水・金(3:00〜6:30)
女性外来
 火・水(9:00〜12:00) 月・火(3:00〜6:30)
ホームページ http://www.mfc.or.jp/

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この記事の著者

池上文尋

池上文尋

バブル期の外資系製薬企業に入社、3年間MR(医薬情報担当者)として勤務後、医療機関側の内部に興味を持ち、青森の医療法人事務長として2年勤務。その後、再びMRへ復帰。外資系企業を2社、合計9年を京都担当のMRとして勤務。
MR時代に趣味で立ち上げたMR-NETが徐々に広がりを見せ、MRに対しての情報発信やサポートに目覚める。勤務先の合併を機にMRを退職し、株式会社メディエンスの代表となる。

現在、オールアバウトジャパン「不妊症」ガイド、妊娠力向上委員会企画運営、MR-NET企画運営、医療機関広報コンサルティング、とMR時代に培った医療知識とITスキルを活用し、医療における分野で幅広く事業を展開中。

池上@自己紹介
http://www.medience.info/profile.html#2
オールアバウト不妊症治療ガイド http://allabout.co.jp/gm/gt/1831/
MR-NET http://mr-net.org/
株式会社メディエンス http://www.medience.info/

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